「龍ちゃん」の店内には、龍とならぶほど多くのネコグッズが溢れている。
それは何を隠そう、店を営む河村夫妻が愛猫家であるからなのだが、最初にネコが河村家にやってきたのは2011年と実はそう遠くない。
――その年の皐月賞は東日本大震災の影響を受け、いつもの中山ではなく東京競馬場での開催となった。
1番人気は前哨戦のGⅡ・弥生賞を勝ったサダムパテック。浩介は当時4番人気にとどまったオルフェーヴルの単勝に賭けていた。
ご存じのとおり同馬は、このレースに勝ったのちそのまま日本ダービー、菊花賞を勝って3歳牡馬クラシック三冠を達成。世界最高峰とされるフランス・凱旋門賞でも2年連続で2着になるなど、平成を代表するスターホースの一頭となる。
そんな馬の単勝が「10.8倍」という高配当なのは、この時が最後であった。
あっ大丈夫です、ネコの話をします。
そんなレースでひと当てした浩介は、勢いあまってペットショップに向かった。
以前からネコを飼いたいと夫婦で思っていたところへ、この臨時収入。
後押しされて、1匹のかわいい子ネコを迎え入れることとした。
折れ耳が特徴で人気のスコティッシュ・フォールド。
河村家にやってきたのは折れ耳ではないが、毛並みのきれいな女の子だった。
箱入り娘の「ハコちゃん」と呼び始めるうち、それが変化して結局「パコちゃん」になっていったという。
そんな風にして念願のネコとの生活が始まったのだった。
そのうちに、1匹ではさみしいかなともう1匹迎え入れようという考えに至った。
そして実際にネコと暮らしてみると、ペット業界についてもさまざまな知識を得ていき、里親を募集しているネコが世に多いことを知った。
ネコをこよなく愛する河村夫妻は、不幸なネコが1匹でも減るようにと、里親として猫を引き取る方法を探り始めた。
そうして出会ったのは、なんと水戸で生まれた子ネコだった。
こちらは日本猫の女の子。
車ではるばる引き取りに行き、水戸ゆえに「ミトちゃん」になってしまったが、それはあんまりだと「ミアちゃん」として定着した。
そんなわけで現在、河村家には9歳のパコと3歳になるミアがいる。
パコ様は見た目の優雅さの通り、基本的にはおっとりしているものの、爪切りなどでひとたび怒らせると手が付けられない凶暴さを備えていると飼い主は明かす。
なんとも「猟奇的な彼女」である。
ミアちゃんはまだまだ若さがあるせいか、ミャーミャーとよく鳴き、いつも清子さんの布団に潜り込んで寝るというネコらしからぬ甘えっぷり。
2匹に共通しているのは、清子さんが部屋からいなくなった途端にそわそわしだす点という。
浩介のあふれんばかりの愛情によるかわいがりが、少し怖いらしい。
そう、この2匹によって河村夫妻が日々癒やされることにより、美味しいラーメンが食べられているかと思うと、2匹の功績は偉大にゃのである。
こちらがパコ様。ごらんの通り、気品が漂います。
こちらはミア様。ギャルです(店主談)
本気を出すと、こうなります…。